井坪工務店

「薪ストーブかぁ、楽しそうだし憧れるけど、実際に使いこなすとなるとなぁ」。 そんなお客様の声をよく聞きます。薪を用意して、一から火を熾し、その後も絶やさないよう火の番をする。 たしかに手間はかかります。けれどその反面、ゆらゆらと揺れる炎や、じんわり体に染み込んでくるような暖かさをひとたび経験したならば、 ほとんどの方は「火」の持つ不思議な魅力にとりこになってしまうようです。今では暮らしからずいぶん離れてしまいましたが、 振り返ればつい数十年前までは、家庭には竈や囲炉裏があって、人々はその火や炎を取り囲むように暮らしていました。 生活必需品としての役割と同時に、「火」には、家族や人と人の輪を結びつける不思議な力を兼ね備えていたのではないでしょうか。

せっかく薪ストーブを取り入れるならば、インテリアのパーツとしてではなく、「生活道具」としてとことん使い倒さなければもったいない! と言っても難しいことはありません。薪ストーブは1台で何役もこなす万能選手。 天蓋の上ではポットでお湯を沸かしたり、お鍋でスープをことこと煮込んだり。 機種によっては、薪をくべる炉とは別にオーブン室があり、そこでパンを焼いたり、お肉をまるごとローストすることもできます。 熾き火のようになった炉のなかに、ホイルに包んだジャガイモやリンゴを放り込んでおけば、数分後にはほくほくポテト、ジューシーな焼きリンゴの出来上がり。 美味しい匂いに誘われて、家族がストーブの周りに集まり、暖をとりながら自然と語らいもはずむことでしょう。

薪ストーブを愛好する人たちはよく「薪は3回暖まる」と言います。1回目は山から木を切り出すとき。 2回目は薪を割るとき。そして3回目がその薪を燃やすときなのだそう。 今の時代、なかなか自分自身で伐採するところから手をつけるのは難しいですが、丸太を手に入れて薪を割る作業はぜひとも挑戦してみたいもの。 地元の大工さんや森林組合などに問い合わせれば、地域で出る間伐材などの丸太の入手先を教えてもらえるかもしれません。 薪割りをすることで、木の種類や特徴を知り、自分の暮らす土地の生態への興味も深まるなど、身の回りの自然環境との付合い方にもおのずと変化が生まれてきます。

ボタンひとつでお湯が沸き、家が暖まる。そんな時代に、わざわざ薪を割って、火を熾すところから始める薪ストーブは、非効率的かもしれません。 ただ、その「非効率性」のなかに、暮らすことの原点が隠されているのではないかと私たちは考えます。家は単なる器ではなく、 そこに暮らす人の健康や生きることの愉しみ、家族同士の人間らしい触れ合いを支え、育む場所。 暮らす人にとっても、受け身になって便利さを享受するだけではなく、少しくらいの不便さや足りないところは工夫して補い合ったり、 ないものは自分たちの手で作り出す……。 「fine」はそんな本来の暮らしの在り方を考え、実践できる場としての「家」づくりを、暮らす人の目線に立って提案していきたいと考えています。